セリエA入門

セリエAを観てみたいけど詳しくない方に向けたセリエA入門ブログです!

セリエAはなぜお金がないのか

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どうも、カルロウです!

 

移籍市場真っ只中の現在、セリエAファンのほとんどが感じてることがあると思います。それは…

 

「カネがねぇ(半ギレ)」

 

この時期、選手の獲得レースが起こるのですが、プレミア勢やPSGなどが参入するとイタリアのクラブは一気に苦しくなります。イタリアのクラブにお金がないことは海外サッカーファンなら誰もが知っていることでしょう。

 

ところで…そもそもなんでイタリアのクラブって金がないの?

 

こんな単純な質問でさえ、答えは実はたくさんあるのです。今回はそれを掘り下げていきたいと思います。

 

 

 

 

 

実際にどのくらい金欠なの?

お金をはかる指標はいくつもあるが、今回はフォーブス誌の発表している2019年クラブの市場価値ランキングベスト20を参考にすると、イングランドのクラブが9つランクインする一方、イタリアのクラブはユベントスインテルミラン・ローマの4つに留まる。

 

 

なぜイタリアのクラブはお金がないの?

では本題に移ろう。イタリアのクラブはなぜお金がないのか。原因は1つとかいう簡単な問題ではないので、今回は考えられる原因を列挙していきたいと思う。

 

まず、金欠になるファクターとして当然ながら2パターンがある。

①収入が少ない

②支出が多い

これは当然だ。2パターンに分けて説明していきたいと思う。

 

 

①収入が少ない

イタリアの場合は①の要素が大きい。現にイタリアのクラブの平均収入は四大リーグでは最低である。順に説明していきたいと思う。

 

(1)放映権

放映権とは「試合を独占的に放送出来る権利」のことで、勿論テレビ局が試合を放送するにはお金を払わなければならない。価値のあるとされているクラブほど、放映権で得られる収入は多くなる。

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放映権は、イタリアの金欠っぷりというよりプレミアの金満ぶりを表すのによく用いられる。プレミア最下位のハダースフィールドの方がユベントスよりも放映権料を得ているのだ。もちろんイタリアのビッグクラブはそれ以外の収入が多いが、そうでないクラブはプレミアの中堅クラブでさえ太刀打ちできないのである。

 

ではなぜこんなにも放映権が違うのか?その理由は大きく分けて2つある。

 

A.リーグそのものの魅力がわかりやすい

基本的にプレミアリーグビッグ6が支配しているが、その中でどこが優勝するかは基本的にわからない。一方、セリエAユベントスが8連覇しており、早々に優勝を決めてしまうシーズンもある。もちろんイタリアサッカーにも様々な魅力があり、僕もそれに惹かれたのだが、多くの人はどっちを観るか選ぶとしたらプレミアを選ぶだろう。魅力的に見えれば必然的に放映権収入も上がるのだ。

 

B.言語面

イタリア語と国際公用語の英語だとプロモーションの際のアドバンテージが違いすぎる。さらに英語話者が多いということは旧植民地権のネットワークも大きいのだ。そこで市場の拡大も比較的楽に進めることができる。一方イタリアの旧植民地が少ないことは皆さんもご存知だろう。こればかりはしょうがない。イタリアのクラブも英語でのプロモーションを進めるしかない。

 

(2)イタリア経済の不安定さ

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これもかなり大きなファクターだ。不況が長引き、債務も解消せず、失業率は2桁を超える…

 

このような状況では人々がスタジアムに行ったりグッズを購入したりする金額が減少するのは容易に想像できるだろう。現にセリエAを見ていると多くのスタジアムのスタンドがガラガラなのが目に入るだろう。そうしてクラブの収入が減りスタジアムなどの改築なども遅れて観戦の環境が整備されず、さらに国民がスタジアムに行かなくなるという悪循環に陥っているのだ。中には破産するクラブも見られる。パルマが破産したのは記憶に新しいだろう。

 

国内経済の苦しいスペインも、ビッグクラブを除いて同様の苦境に陥っている。イタリア同様に破産するクラブも見られる。国内経済が自国のサッカーに与える影響は大きいのだ。

 

(3)スタジアム問題

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イタリアのクラブはスタジアムに関して様々な問題を抱えている。いくつかの要素に分けられると思うので順に説明していきたいと思う。

 

A.クラブ所有のスタジアムが少ない

イタリアのクラブの多くがスタジアムを所有してないことは有名だ。多くは自治体所有となっている。現在イタリアでスタジアムのクラブ保有をしているor保有が決まっているクラブはユベントスアタランタウディネーゼサッスオーロカリアリ、SPAL、ボローニャフロジノーネ(抜けてたらすみません)。インテル&ミランはまだ計画段階だ。ユベントスが専用スタジアムを保持してから収入が増え、躍進したことは記憶に新しい。

 

「金がないからスタジアムが買えないのか」「スタジアムがないから金が入らないのか」どちらが先かはわからないが、やはり改修などにも逐一自治体の許可が必要なため非常に新陳代謝が悪いので状況を改善してもらいたい次第だ。スタジアムの建設はFFPにはひっかからないので是非ともすすめてほしい。

 

B.スタジアムの老朽化

ユベントスのように派手なショーアップされたスタジアムもあるが、エンポリみたいにあまり綺麗とはいえないスタジアムも多い。これでは集客はあまり見込めないだろう。しかしこれも多くのクラブで改築案が出ても自治体が許可せず改築が頓挫した結果でもあるため早期解決が待たれる。

 

C.スタジアムの治安

これも非常に大きな問題だ。イングランドフーリガンを追い出して家族でも安心して観に行けるスタジアムにしたが、イタリアはまだそうとはいえない。特にダービーでは暴動が起こることもしばしば。さらに最近ではイタリアサッカーにおける人種差別が横行している。過激なサポーターが試合中に人種差別のチャントを歌うのだ。これでは金を持っている家族連れや観光客は観に行くことをためらうだろう。

 

 

②支出が多い

(1)放漫経営

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現在も放漫経営が続いてるという訳ではないが、ビッグクラブを中心にどちらかというと放漫経営が負の遺産となって財政を苦しめている。イタリアの没落の原因としてよく言及されるインテルミランに着目すると、2000年代には収支を無視した大型補強が続き多額の赤字を毎年記録していた。それが積み重なって多額の負債となっているのだ。現に「Daily Star」の「The 20 European clubs with the highest net debt」によると、2018年度の負債ランキングではイタリアのクラブはトップ10のうち4クラブ(インテルユベントスミラン・ローマ)がランクインしている。ユナイテッドのようにそれを賄える収入があればいいが、上記の理由で収入もあまり多くないのが現状だ。

 

(2)税制

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これは改善したが一応触れておく。日本と同様に、イタリアは累進課税である。かつてまで北部の外国の選手には最大で47%、南部では43%の所得税が課せられていた。セリエAの選手の平均年俸は約168万ユーロであるため、ほぼ全ての選手が高額所得者に当てはまる。一方2010年までスペインは24%であった(現在は43%)。これではスター選手を呼ぶにおいて不利な状況である。

 

しかし今年6月に、イタリアにおいて外国籍選手の大幅減税の法案がつくられた。これにより北部の選手は30%、南部は15%になる。これは43%のスペイン、45%のイングランドなどと比べてかなり安いため、今後のスター選手獲得への一助となるだろう。

 

詳しくはこちらをご覧ください

https://news.yahoo.co.jp/byline/moritayasushi/20190727-00135073/

 

ちなみになぜ南部の方が安いのは南部の経済の促進を狙ってますね。参考までに前回の記事をどうぞ(隙あらば宣伝)

https://calcitappi.hatenablog.com/entry/2019/06/30/184223

 

 

ではどうすればいいの?

これは非常に解決の難しい問題である。ましてや日本に住む1人の大学生が簡単に解決策を出せるはずがない。ただ解決していく方向性にはおそらく2種類あるだろう。

 

①ビッグクラブが飛び抜けることで改善していく

②下位クラブからじわじわと改善していく

 

ユベントスの1強状態の続くリーグの現状から考えると、おそらく①の方が適しているのだろう。実際にユベントスクリスティアーノロナウドの獲得はセリエA全体の注目度をアップさせた。このようにユベントスセリエA全体の鍵を握っているだろう。

 

最後に

セリエAはなぜ金がないのか。こんなシンプルな疑問でも様々なファクターが絡んでいることがわかっただろう。実際の問題はもっと複雑なのかもしれない。サッカー界にはびこる問題も大体は色々なファクターが絡んでいる。例えばフィールド上の問題でも歴史を振り返らなきゃ解決しないものであるかもしれない。このように様々な視点から現代サッカー界の問題を見てみたらとても面白いだろう。