セリエA入門

セリエAを観てみたいけど詳しくない方に向けたセリエA入門ブログです!

セリエAの1強問題をわかりやすくまとめてみた

初心者が海外サッカーを観始める時、セリエAを選ぶ人は少ないでしょう。ではなぜ少ないのか?色々な理由があると思いますが、大きな理由として…

 

セリエA?どうせユベントスが優勝するんだろ⁉︎」

 

その通りです。現在ユベントスセリエAを8連覇しています。これはセリエA史上最長の連続優勝です。その8連覇も、シーズンによっては序盤から独走ってのもしばしば。これじゃ面白くないと思う人がいても不思議ではありません。ですが…

 

「どのくらい強いの?」

「なんでこうなったの?」

「どうすればいいの?」

 

といった疑問が起こるのは自然です。特に普段あまりみていない他のリーグのファンにとっては不思議ですよね。

 

極端な1強リーグの形成には

①1位のクラブが良くなった

②他のクラブが悪くなった

の2つの要素が両方揃い、さらにその現象が

⑴ピッチ内

⑵ピッチ外

の両方に現れる必要があります。

 

今回の場合だと

ユベントスが強くなった

②ミラノ勢が弱くなった

に置き換えられます。ミラノ勢である理由は、ユベントス1強体制の前に強かっただけでなく、過去の実績・ファンの多さ・世界的認知度といったブランド力の観点で、ユベントスに対抗・凌駕できる力があるからです。それでは、1つずつ疑問に答えていきましょう! 

 

 

 

1.どのくらい強いの?

本題に移る前に、まずこの質問に答えましょう。

⑴ピッチ内

前述の通り、ユベントスセリエAを8連覇しています。これはセリエA史上最長で、他のリーグと比較しても異常であることは明らかです。参考がてらにこの5年間の勝ち点を比較すると…

 

ユベントス→448点

ナポリ→401点

ローマ→380点

ラツィオ→324点

インテル→304点

ミラン→273点

 

圧倒的ですね。ピッチ内の強さは言うまでもないでしょう。

 

 

⑵ピッチ外

ではピッチ外ではどうでしょうか?まずクラブの規模を把握することが大切です。ということで、セリエAのビッグクラブの今年度のクラブの総年俸を比較してみると…

 

ユベントス→2億9400万€

インテル→1億3900万€

ローマ→1億2500万€

ミラン→1億1500万€

ナポリ→1億300万€

ラツィオ→7200万€

 

もう笑っちゃうくらい圧倒的ですね。ちなみにかの有名なクリスティアーノ・ロナウド3100万€の年俸を貰っています。これはウディネーゼ・SPAL・ブレシアヴェローナのチームの総年俸を超えてしまいます。それで番狂わせ起こせってのも厳しい話です。

 

 

 

2.どうしてこうなったの?

答えは簡単です。イタリアではユベントスだけが的確な時期に的確に補強し、監督が的確に指導したからです。

 

⑴ピッチ内

まず「監督が的確に指導した」の部分、つまりピッチ内ではどうでしょうか?

 

ユベントスが強くなった

2010-11シーズン、ユベントスはまだカルチョポリの打撃を引きずり、シーズン7位・ELではグループリーグ敗退と低迷していました。鬱屈した雰囲気の時は、まず選手のマインドセットを変えるような監督が必要です。そこで招聘されたのが、クラブのレジェンドでまだアントニオ・コンテでした。彼の練習はとてつもなく厳しく、さらに彼自身も超熱血であり、まさに「泥臭いユーベ」「Fino alla fine」を体現するチームとなりました。コンテ率いるユベントスは、他のライバルクラブの経営不振にも乗じて、セリエAを一気に3連覇しました。

 

次に就任したのは、カリアリで名を挙げたマキシミリアーノ・アッレグリ。就任当初は懐疑的な見方も多かったですが、PSGやプレミアのように大金を使った補強が出来ないユベントスにとって、現有戦力を上手くやりくりして結果を出せるアッレグリは最高の監督でした。就任初年度にセリエA4連覇を達成し、CL準優勝も達成しました。

 

②ミラノ勢が弱くなった

一方他のクラブはどうでしょうか。当時、スクデットの最大のライバルはインテルミランでした。

 

インテルは2009-10シーズンの3冠メンバーが高齢化し、完全にサイクルの転換に失敗。結局2018-19シーズンまでCLの舞台に返り咲くことは出来ませんでした

 

ミランはとにかく財政難で、2012-13シーズン前にイブラヒモビッチアゴシウバという2大巨頭を放出して以降はスクデット争いになかなか絡めなくなってきました。

 

 

⑵ピッチ外

ユベントスが強くなった

ユベントスはコンテを招聘した2011年の9月に、イタリアで初となるクラブ専用スタジアムの「ユベントス・スタジアム」を完成させます。このスタジアムは収容人数は40000人強と少ないですが、派手なショーアップもピッチとスタジアムが近いことで人気が高く、チケット収入は前のスタジアムの時の3倍、前年度の4〜5倍にまでなりました。

 

さらに専用スタジアムには、サッカー以外の用途でのスタジアムの利用料もクラブ収入となりますのでどんどん収益を伸ばしていきました。もとからあるブランド力も大きかったですね!

 

スタジアムなどのユベントスの経済的な話はこちらに詳しく記載されております

https://www.goal.com/jp/news/1867/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2/2016/10/30/28990412/%E3%81%AA%E3%81%9C%E5%A4%A7%E8%B5%A4%E5%AD%97%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%83%A6%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%8F%8E%E7%9B%8A%E3%81%AF6%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%81%A7%E5%80%8D%E5%A2%97%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8B%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0

 

②ミラノ勢が弱くなった

一方インテルミランはどうなのでしょうか?

この2チームは2000年代に結果を残した一方で、収支を無視した大型補強を繰り返し、毎年多くの赤字を記録していました。このような放漫経営のツケが2010年代に回ってきたのですね。

 

さらにミラノ勢の財政に大きなダメージを与えたものがあります。そう、2011年に導入されたFFP(Financial Fair Play)です。

 

FFPが導入されると、赤字経営のクラブは財政再建のために高額な年俸を貰う主力選手の売却に迫られます。

 

インテルは2011-12にエトーを、翌シーズンにはマイコンルシオ・ジュリオセーザルを売却。2013-14シーズン後にはサネッティの引退に加え、カンビアッソ・サムエル・ミリート・キヴといったレジェンドを放出せざるを得なかった。

 

ミランも同様に、2011-12シーズンはピルロユベントスに、2012-13シーズンにはイブラヒモビッチ・チアゴシウバ・ガットゥーゾネスタセードルフファンボメルインザーギザンブロッタといった正真正銘のレジェンドを泣く泣く手放します。

 

両クラブともこれらの代わりに安価で優秀な選手を獲得しましたが、レジェンドクラスの彼らには遠く及ばず、CL争いからもとうとう脱落してしまうのです。

 

このように、ピッチ内・ピッチ外で盤石な体制を築いたユベントスは、ナポリやローマといった南イタリアのクラブの台頭を圧倒的な戦力で退けていきました。

 

 

 

3.ではどうすればいいの?

解決策を実行するには、抽出された根本原因を打ち消すものでなくてはなりません。

 

そしてこれもまた、

ユベントスを弱くする

②ミラノ勢を強くする

の2パターンに分かれ、さらにアプローチ方法として

⑴ピッチ内

⑵ピッチ外

に分けることが出来るでしょう。

 

しかし、現実的に考えて「①ユベントスを弱くする」ことは、リーグ全体のレベル・競争力を下げる危険性が高いです。そのため、「②のミラノ勢を強くする」ことに対して⑴ピッチ内⑵ピッチ外のアプローチを提示したいと思います。

 

しかし、そもそもインテルミランをとりまく環境が大きく異なります。インテル2年連続でCLに出場し、今年は大型補強を敢行、いまや優勝候補の一角です。一方ミランは大型補強が外れ、いまだにFFPの問題は解決せず、CLにも出れていません。今回は「ミラノ勢の復活」ではなく「1強状態の解決」がトピックなので、より復活への軌道にのっているインテルに焦点をあててみましょう。

 

 

⑴ピッチ内

今のところはこのままで大丈夫でしょう。開幕から4戦全勝で、名将コンテが結果を出し続けています。強いて言えば、シーズン後半にブロゾビッチやルカクといった代わりのいない選手の疲労が溜まった時に真価が問われます。

 

 

⑵ピッチ外

インテルは2019年5月にFFPの和解協定からの離脱が決まりました。これによってCLでのメンバー登録制限や、無理な主力売却の必要性がなくなりました。これを受けて今年のインテルは大型補強を敢行し、ルカク・サンチェス・ゴディン・バレッラ・センシ・ラザロ・ビラーギ・ディマルコを獲得するといった充実したメルカートを過ごしました。

 

インテルFFPで痛い目を見たため、もう一回引っかからないためには今後はバランスの良い補強を行っていく必要があります。そのために大切なのは余剰戦力の売却です。現在PSGにレンタル中のイカルディには、総額6500万€という高額な買取オプションがついています。PSGで活躍して買い取ってくれるならば何も問題はないのですが、活躍せずに価値が下がった状態でインテルに戻ってくれば、売り手を見つけるのはなかなか苦労するでしょう。さらに高齢のペリシッチが買取されず、単純ローンのナインゴランも戻ってくると不良債権となるリスクもあるので、一概に楽観的だとは言えません。

 

 

⑶新勢力の台頭

実は1強を終わらせるにはもう一つの選択肢があります。ナポリの台頭です。SNSなどのフォロワー数を見てもブランド力という意味ではユベントスやミラノ勢には遠く及びませんので、将来的にメガクラブとなるのは厳しいですが、彼らには実力があります。会長のデ・ラウレンティスは選手を残すのが上手ですし、現有戦力の維持が出来れば、ナポリの王朝を築くのは厳しいかもしれませんが、1シーズン優勝する可能性は十分あるでしょう。しかし今シーズン限りでメルテンスカジェホンというナポリを支えてきた選手が退団する可能性も高いので、今年を逃すわけにはいかないでしょう。 

 

 

 

4.最後に

今回の記事で今までなんとなく「セリエAって1強なんだな」とか知らない人も理解していただければ嬉しいです。いつ、そして誰がユベントス1強体制を打ち破るのか?サッリ初年度でいまいち噛み合っていない今期は最大のチャンスでもあります。今まで興味はあったけどなかなかセリエAをみるのを躊躇っていた人も、是非見てみてはいかが?