セリエA入門

セリエAを観てみたいけど詳しくない方に向けたセリエA入門ブログです!

セリエAの観客動員とスタジアム

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DAZNを適当にザッピングしてると、セリエAの試合がやってます。

暇だし見てみるかー!とクリックします。

すると目の前にはガラッガラのスタジアムが!

「やっぱりセリエAは昔ほどは元気ないし観客も少ないんだろうなぁ」

と考えるのは自然です。(まあこれは違うんですけど※後述)しかし、リーグランキングでセリエAより下のブンデスリーガを見てみると…

どこも満員だ!と思いますよね。

ここで一つの疑問が生まれます

「なんでセリエAのスタジアムってこんなにガラガラなの?」

実はこの問題、思っている異常に様々なファクターが絡んでいます。

ということで今日はセリエAの観客数の少なさについて語っていきたいと思います

 



0.観客動員数は?
確かにガラガラな印象はあるけど、実際にセリエAはどれくらいガラガラなの?

と不思議に思うかもしれません。ということで「CIES」が発表している各リーグごとの2013-18の5年間の平均観客数を見てみましょう。

 

1位 ブンデスリーガ 43,302人

2位 プレミアリーグ 36,675人

3位 リーガ・エスパニョーラ 27,381人

4位 リーガMX 25,582人

5位 セリエA 22,967人

 

メキシコリーグより少なく、ブンデスの半分…

しかも最新の統計ではサッカー熱が上がっている中国の超級リーグにも抜かれています。さすがにヨーロッパ以外のリーグに抜かれるのは寂しいですね…

 

では、なぜそんなに少ないのでしょうか?

一つずつ分析していきましょう!!!

 

 

A.スタジアム問題

観客が試合を観るスタジアムがちゃんとしていないと、そもそも観客が来なかったり、リピーターにならなかったりします。イタリアのスタジアムは様々な問題を抱えています。順に見ていきましょう。

 

⑴.スタジアムの設備

①スタジアムの老朽化

セリエAのスタジアムは、改修しているとはいえ古いものが多いです。ほとんどのスタジアムは戦前に作られたものが多く、中下位や地方のクラブは1990年のイタリアW杯前後以来改修をしていないものが多いです。例えば…

Stadio Luigi Ferraris(ジェノアサンプドリア

  1911年開業 1989年改修

Stadio Ennio Tardini(パルマ

  1923年開業 1993年改修

Stadio Renato Dall'Ara (ボローニャ

  1927開業 1990年改修

Stadio Artemio Franchi(フィオレンティーナ

  1931年開業 1990年改修

Stadio Olimpico(ローマ・ラツィオ

  1937年開業 1990年改修

Stadio Via del Mare(レッチェ

  1966年開業 1985年改修

Stadio Marc'Antonio Bentegoti(ヴェローナ) 

  1963年開業 1989年改修

 

スタジアムが古いともちろん設備の質が劣り、客足も遠のきます。確かにボローニャのダッラーラのように古さによって味が出てくるスタジアムもありますが、彼らも改修計画があるように、やはり古さは大きなDisadvantageに違いありません

 

しかし、スタジアムの客足とスタジアムの新しさって関係あるんでしょうか?去年1年間のスタジアムがどのくらい埋まっているのかと改修時期の相関性についてみてみましょう。(データミスってたら申し訳ございません)

※観客動員数のデータの引用元(https://www.transfermarkt.com/serie-a/besucherzahlen/wettbewerb/IT1/plus/?saison_id=2018

ベスト5

ユベントス 94.5%  開場2011年

カリアリ  90.4%  開場2017年(予備のスタジアム)

SPAL             84.0%   改修2018年

フロジノーネ81.8%  完成2017年

ウディネーゼ80.8%  改修2016年

 

ワースト5

キエーヴォ 39.5%  改修1989年

ラツィオ  45.9%  改修1990年

エンポリ  47.8%  開場1965年

ナポリ   52.3%  データには反映されないが今季前に改修

ローマ   52.7%  改修1990年

 

確かに新しいスタジアムはより近年の観客動員数をもとにしてスタジアムをつくっているため一概には言えませんが、近年改修したクラブのほとんどは観客動員数を伸ばしていますし、ここまで露骨に出るとさすがにスタジアムの新しさと相関があることは否定できないと思います。

 

②観客席とピッチが遠い

 ダイナミックで迫力満点のプレミアリーグとは違って、セリエAのスタジアムには、陸上トラックがついてるのも多く、観客席とピッチの距離が全体的に遠いといえます。例えば、一番上に貼った画像を見てみましょう。これはローマとラツィオという2つのビッグクラブを抱えるStadio Olimpicoなんですが、ピッチと観客席の間に陸上トラックが存在するのがよくわかりますよね。またセリエA屈指の強豪ナポリのホームスタジアムStadio San Paoloも陸上トラックが存在します。ビッグクラブでさえそうなのですから、他にもたくさんあります。例えば冨安の所属するボローニャのStadio Renato Dall'Araを始め、Stadio Marc'Antonio Bentegoti(ヴェローナ)やStadio Artemio Franchi(フィオレンティーナ)の一部などは非常にピッチと観客席の間に距離があります。高いお金を払っても席が見づらいのならテレビで見ようかってなりますよね。

 

③サッカー専用スタジアムの必要性

「なぜこんなにもピッチと観客席の距離が遠いのか」「なぜ陸上トラック付きのスタジアムが多いのか」に関しては、セリエAがクラブ所有のサッカー専用スタジアムが少ないことが第一の理由に挙げられます。それならばクラブ所有のスタジアムを建てればよいのですが、それにはそれ相応のお金が必要となるだけでなく、自治体からの許可を得る必要もあるためなかなか簡単にはいかないのです。また、事実確認はとれてないのですが面白い話としてローマは歴史的遺産が多く、地面を掘ると遺跡が出てくるためになかなか場所がないといった話も聞いたことがあります。

 

 ⑵スタジアムの治安

スタジアムが危ない場所だと、お金を持っているとされる観光客や子供連れなどが行きづらくなるのは想像できますよね。かつてサッカー界には「フーリガン」と呼ばれる人々がいたのは皆さんもご存じだと思います。彼らの多くが労働者階級で、ひどく酔っぱらってスタジアムに入って暴れだす…「ヘイゼルの悲劇」なんかは非常に有名ですね。この悲劇以降各国はフーリガン対策に取り組み、そのような明らかに危ない人々はいなくなりました。しかし現在でも、集団心理が働くのかもしれませんが、"熱狂的"なサポーターが相手選手に暴言を吐いたり相手サポーターともめごとになることは頻繁にあります。イタリアももちろん例外ではなく、特にローマダービーという仲の悪いクラブ同士の対決だと、暴力沙汰になるのはよくあることです。

 

また皆さんご存知の通り、最近は人種差別チャントセリエAがクローズアップされることも多いですね。このような状況ではスタジアムに行きたくないと感じても不思議ではありません。

 

B.渋るサポーター

イタリア経済の不振

一度でもJリーグの試合を観に行ったことの方はおわかりだと思いますが、サッカー観戦にはとにかく金がかかります。なのでお金の持っていない人だと必然的に毎試合行くのは厳しくなります。現にイタリア・スペインといった経済状況の不安定な国より、イギリス・ドイツといった経済的に安定した国(最近は雲行きが怪しいが)の方が入場者数が多いのがわかると思います。

 

現在経済危機をなんとか乗り切ったイタリア経済はゆるやかな回復傾向にあるとされていますが、基本的に経済成長率は欧州全体の平均を下回っています。財政基盤がぜい弱なイタリアはEU諸国の中でもかなり経済が不安定な国の一つで、いち早く景気後退に向かうとみられています。

 

  現在イタリアの失業率はおおまかにいえば約10%、若者の失業率に限って言えば約40%にもなります。このような状況の中、設備もいいとは言えないスタジアムに足を運ぶ人は少ないでしょう。

 

 

【参考】イタリアクラブの不振

皆さんはおそらくこれが最も大きな原因だと思うでしょう。実はこれは数字だけみるとそれほど大きな問題でもないんです。セリエA没落の大きな原因であるカルチョポリ以前の2004-05年シーズン(イスタンブールの奇跡の年)と昨年の20クラブの平均観客動員数を比較してみると…

2004-05→25,564人、2018-19→25,051人

意外なことにほとんど変わってないですね。では他のリーグを見てみましょう!

プレミアリーグ

2004-05→33,939人、2018-19→38,188人

リーガ・エスパニョーラ

2004-05→29,789人、2018-19→27,092人

ブンデスリーガ

2004-05→37,824人、2018-19→43,467人

 

これを見ると、プレミアとブンデスが大きく伸ばしているのに対し、セリエA・リーガは減少しています。これは上で述べたスタジアム・国内経済においてうまくいっているプレミア・ブンデスとうまくいっていないセリエA・リーガがきれいに結果として出ているってことです。

 

人々は所属クラブが極端に不調でなくてお金と環境さえあればスタジアムに行きたいのです。いかにピッチ外の環境整備が大切なのかを思い知らされますね。

 

D.上手くいっているクラブ

上手くいっているクラブはいくつかありますが、今回はウディネーゼをピックアップします。ウディネーゼは明らかにスタジアム改修で観客動員数を伸ばしたクラブです。

 

2013/14 14135人

2014/15   9015人

2015/16 15885人(1月に改修)

2016/17 17287人

2017/18 17633人

伸びてますよね!!

そして昨年は20,329人を動員しました!!!

 

このようにスタジアムの大幅改修をすることでウディネーゼは人口10万人程度のホームタウンでありながらも安定した観客動員を達成したのです。

 

なんとさらにウディネーゼはスタジアムを多目的化するために複合施設の建設を進めているそうです!ユベントスアリアンツ・スタジアムはそれで大きく収益を上げたので期待ができますね!!

※参考

https://www.thestadiumbusiness.com/2019/07/16/udinese-stadium-revamp-bring-public/

 

 

E.最後に

いかがだったでしょうか?

全体的にみるとやはりスタジアム改修は観客動員に効果的(キャパシティも身の丈に合う)ですし、スタジアム改修はFFPに影響がないみたいなのでぜひやっていただきたいですね!

 

しかしイタリアのクラブはお金がないから難しい。しかしスタジアムがないとお金も入って来ません。この問題は解決が難しいですが、ファンとしては観客で埋まるスタジアムを見ていたいですね!なぜイタリアにお金がないのかは過去の記事をみてください(最後に宣伝)。読んでいただきありがとうございました!

https://calcitappi.hatenablog.com/entry/2019/07/17/211015